『SHIROBAKO』最も嫌われる男「平岡」からモノ作りの現実を考えてみる

『SHIROBAKO』最も嫌われる男「平岡」からモノ作りの現実を考えてみる

SHIROBAKO視聴者の中では、かなり嫌われている平岡。
しかし、現実は彼みたいな人ばかり?

■最初に
私は、アニメ制作の関係者でもなんでもなく、ただの視聴者です。ですが、社会人で、職種は違いますが物作りの現場にいたこともあり、その観点から書いてみました。考察が実際のアニメ制作の現実とは違うかもしれませんが、その場合はご容赦ください。

■平岡について
SHIROBAKOのキャラクターに平岡大輔という人物がいます。この人は、2クール目から登場した制作進行で、退職した本田と休職する矢野の代わりに、中途採用した、という経緯があります。アニメ業界に入って5年目で、武蔵野アニメーションで5社目となります。

■なぜ、平岡は嫌われているのか?
この平岡ですが、SHIROBAKO視聴者の中では、かなり嫌われています。嫌われるのは、その人となりのせいで、集団行動をせずマイペースで仕事をこなす、自分に関わらない事には口を出さない、最低限のクオリティ以上を望もうとしない、宮森に問題のある下請けを紹介しておいてピンチになっても知らんふり、など問題行動が多いです。第20話では、作画のリテイクに文句を言った事から喧嘩に発展し、第21話では、仕事のやり方を注意する上司の宮森に喰ってかかりました。

■ひねくれた原因はなんなのか?
なんで、このようにひねくれてしまったのか。第19話で、旧知の矢野に、入社1年でアニメに対する情熱が冷めた、と言いました。第21話で、矢野は、専門学校時代の平岡は進んでリーダーシップを取る人物だった、と言いました。また、第20話では、みどりに対し、ちゃんと仕事をしているのにチャンスをもらえない人がいる、と発言していました(この発言の前に、女だから、とみどりを中傷していて、さらに嫌われました)。それらから考えると、入社して希望に燃える平岡が、アニメ制作現場の現実の壁に当たり、その酷さから夢を失くし、報われない事が多々あり、その結果、現在のようになったのかもしれません。

平岡からアニメの制作現場について考えてみる
私は、平岡の事を好きではありませんが、あまり攻める気にもなりません。社会人を経験すると、仕事には、資金と時間と人材が必要で、それらは有限どころか、必要数を確保されていない場合もある、ということがわかります。SHIROBAKOを見て気になっていたのですが、1クール目で、監督の木下の方針変更で、残り少ない時間と人材(多分資金も)を使い、内容を変更する場面が何回かありました。最終的に修正したものが褒められ、木下は報われたかもしれませんが、現場の人間、さらにその下請けの人間は、時間も人手もなくかつかつになりながら作業をして、果たして報われたのでしょうか。時折アニメーターの窮状を訴える記事が配信されますが、上の方針変更を下が我慢して支えている、というのが現状かもしれません。
SHIROBAKOは、アニメ制作を描いていますが、どちらかというと綺麗事に近いもので、実際は、タイタニックの演出が、クオリティアップのため修正を指示する木下に対し、テレビに似合わない事をするな、と言ったのが、現実に近いのかもしれません。平岡も、後工程の事を考えずに、という発言をしましたが、修正作業は、クオリティアップのため、という側面と、余計な仕事を背負わされる、という側面があることを考えなければなりません。そういう意味では、第21話のサブタイ「クオリティを人質にすんな!」は、まさに背負わされるほうからの叫びでしょう。その修正は、本当にクオリティアップなのか、監督、演出、作監の自己満足ではないか、と。

アニメ関係者によると、リアルの制作進行は、平岡のような人間が多いそうです。結局、アニメ制作現場は、宮森より平岡の方が現実ということでしょう。ですので、平岡を嫌うのも結構ですが、なぜそうなったかを考えてみて、今一度SHIROBAKOを見直すのもおもしろいと、私は思います。

SHIROBAKO 公式サイト
http://shirobako-anime.com/

[ライター:猪が鳴く頃に]

John Garema

John Garema